Oracle AI Database 26ai オンプレ版 2026年1月リリース決定!19cとの違いとAI新機能を解説

CDB/PDB(マルチテナント)

Oracle Database の次期 Long Term Support (LTS) 版となる 「Oracle AI Database 26ai」 のオンプレミス向け Enterprise Edition (Linux x86-64) が、2026年1月にリリース されることが明らかになりました。

本記事では、長らく待ち望まれたオンプレミス版のリリース情報と、現行の主流である Oracle Database 19c との決定的な違い、そして目玉となる AI Vector Search の実装例について、実務家目線で速報解説します。

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記事の要約(TL;DR)

  • 結論: Oracle 26ai (旧23ai) のオンプレ版は 2026年1月後半 に登場予定。19c 以来のメジャーアップグレード先となる。
  • 最大の変化: AI Vector Search が標準搭載。SQL で RAG(検索拡張生成)が実装可能に。
  • 注意点: CDB/PDB 構成が完全必須。非CDB構成は廃止されたため、移行設計が必要。
  • SQLの進化: FROM DUAL 不要、BOOLEAN 型サポートなど、開発者体験 (DX) が大幅向上。

1. Oracle AI Database 26ai とは?

23ai から 26ai への名称変更

これまで「Oracle Database 23ai」として知られていたバージョンですが、2025年10月の発表により、今後の LTS(長期サポート版)は 「Oracle AI Database 26ai」 という名称に統一されました。 内部バージョンは 23.26.x となり、実質的には 23ai の機能強化版です。

リリーススケジュールとサポート期間

項目詳細
製品名Oracle AI Database 26ai Enterprise Edition
対象 OSOracle Linux 8 / 9, Red Hat Enterprise Linux 8 / 9 (x86-64先行)
リリース時期2026年1月 (予定) ※CPUリリース日(1/20)前後が濃厚
サポート期間Premier Support: 2031年12月31日まで (予定)
19c の扱いPremier Support は 2029年末まで延長済

開発者向け Free 版は先行利用可能

Enterprise Edition の正式リリースに先立ち、学習・検証・小規模開発向けの 「Oracle Database 26ai Free」 (旧 Express Edition 相当) は既に提供が開始されています。 Docker コンテナイメージや RPM パッケージとして入手可能で、AI Vector Search などの新機能を今すぐ手元の環境で試すことができます。

  • 制限: 最大 12GB ユーザーデータ、2 CPU スレッド、2GB RAM
  • 用途: 開発、テスト、学習(本番利用不可)
  • 入手先: Oracle Database Free | Oracle 日本

2. 19c と 26ai の違い(比較表)

19c からの移行を検討する際、特に影響が大きい変更点をまとめました。

機能カテゴリOracle 19cOracle 26ai (旧 23ai)影響・メリット
アーキテクチャ非CDB / CDB 併存CDB/PDB 構成のみ非CDB廃止。移行時に構成変更が必須。
AI・検索Oracle Text (全文検索)AI Vector Searchベクトル埋め込みをネイティブ保存。RAG構築がDB単体で可能。
データ型BOOLEAN なし (PL/SQLのみ)BOOLEAN 型サポートテーブル列に TRUE/FALSE を定義可能。
SQL構文FROM DUAL 必須FROM DUAL 省略可SELECT sysdate; だけで実行可能。
開発機能JSON (BLOB/CLOB)JSON Relational DualityJSONとリレーショナル表のいいとこ取りが可能。
管理パスワードファイル管理管理簡素化PDB単位のパスワードファイルなどが柔軟に。

3. 実践:19c ユーザーのための 26ai 新機能実装例

ここでは、26ai で追加された機能を、19c ユーザーにも分かりやすい SQL 例で紹介します。

① AI Vector Search(ベクトル検索)の実装

26ai の目玉機能です。外部のベクトルDBを使わず、Oracle Database 内で「意味検索」が可能になります。

シナリオ: 製品レビューのテキストをベクトル化して検索する。

-- 1. ベクトル型カラムを持つテーブルの作成
-- VECTOR型: 次元数(例:3)と数値型(FLOAT32)を指定
CREATE TABLE product_reviews (
    review_id   NUMBER PRIMARY KEY,
    review_text VARCHAR2(1000),
    embedding   VECTOR(3, FLOAT32)
);

-- 2. データの挿入
-- 本来は LLM で生成したベクトル値を入れますが、ここではダミー値を設定
INSERT INTO product_reviews VALUES (
    1, 
    'バッテリーの持ちが最高です。', 
    '[0.1, 0.8, 0.2]'
);

INSERT INTO product_reviews VALUES (
    2, 
    '画面が割れやすいのが難点。', 
    '[0.9, 0.1, 0.1]'
);
COMMIT;

-- 3. ベクトル検索(類似度検索)の実行
-- 検索クエリ「耐久性に問題がある」に近いベクトル([0.85, 0.15, 0.1])を探す
-- 19cには存在しない新しい構文です
SELECT review_id, review_text
FROM product_reviews
ORDER BY vector_distance(embedding, '[0.85, 0.15, 0.1]', COSINE)
FETCH FIRST 1 ROWS ONLY;

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② 開発者歓喜!SQL の簡素化 (Better Developer Experience)

19c まではお馴染みだった「お作法」が不要になります。

-- 【26ai】 FROM DUAL が不要になります
SELECT sysdate;
SELECT 1 + 1;

-- 【26ai】 BOOLEAN型がテーブル列定義で使用可能に
CREATE TABLE user_settings (
    user_id NUMBER,
    is_active BOOLEAN DEFAULT TRUE
);

-- 挿入も直感的
INSERT INTO user_settings VALUES (101, FALSE);
INSERT INTO user_settings VALUES (102, TRUE);

-- 条件句でもそのまま利用可能(1=1 などが不要)
SELECT * FROM user_settings WHERE is_active;

4. 移行・運用時の注意点(トラブルシューティング)

26ai 導入時にハマりやすいポイントをリストアップしました。

CDB/PDB 構成の強制

  • 現象: 19c で「非CDB (Non-CDB)」構成を使用していた場合、そのままアップグレードすることはできません。
  • 対策: AutoUpgrade ツールを使用することで、非CDB から PDB への変換を含めたアップグレードが自動化されます。手動で行う場合は、Data Pump でのエクスポート/インポート(expdp/impdp)時に full=y で移行し、インポート先を PDB にする必要があります。

クライアント互換性

  • 注意: 非常に古い Oracle Client (11gR2 以前など) からの接続はサポートされない可能性があります。
  • 推奨: アプリケーションサーバー側の Oracle Client も 19c または 23ai/26ai クライアントへ更新することを強く推奨します。

廃止機能

  • 確認: DB_UPGRADE_CACHE_SIZE などの古いパラメータや、一部の古い監査機能が削除・非推奨となっている場合があります。アップグレード前に必ず「Oracle Database 26ai アップグレード・ガイド」の「動作の変更」セクションを確認してください。

5. よくある質問 (FAQ)

Q1. 23ai と 26ai は別物ですか?

A1. 基本的には同じコードラインです。Oracle Database 23ai の機能に加え、最新の機能強化と長期サポート(LTS)のコミットメントを含めてリブランドされたものが「Oracle AI Database 26ai」です。アプリケーションの再認証などの手間は最小限で済みます。

Q2. 19c から直接アップグレードできますか?

A2. はい、可能です。Oracle 19c (19.x) から 26ai への直接アップグレードはサポートされています。Oracle AutoUpgrade ツールの利用が推奨されます。

Q3. Standard Edition 2 (SE2) でも AI機能は使えますか?

A3. はい、AI Vector Search を含む多くの開発者向け機能は、SE2 でも利用可能です。ただし、一部の並列処理やパフォーマンス向上のためのオプション(Exadata固有機能など)は EE または Exadata 環境限定となる場合があります。

6. まとめ

Oracle AI Database 26ai は、単なるバージョンアップではなく、「AI をデータに連れてくる (AI for Data)」 ことを実現するプラットフォームです。

  1. リリース: オンプレミス版は 2026年1月 (予定)。
  2. AI機能: AI Vector Search により、RAG や類似検索が SQL だけで完結する。
  3. 検証: Free 版 を利用すれば、今すぐ無料で機能検証が可能。
  4. 移行: 19c からの直接移行が可能。ただし CDB/PDB 化は必須。

DBA の皆さんは、まずは Free 版のコンテナを立ち上げて、新しい SQL 構文や AutoUpgrade の挙動を確認し、来たるリリースに備えましょう。

注記 本記事は Oracle Database 19c および 2025年12月時点の Oracle AI Database 26ai プレリリース情報を基に解説しています。実際の製品リリース時には画面や既定値、詳細な日付が変更になる場合があります。必ず公式ドキュメントをご確認ください。

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