高速リカバリ領域(FRA: Fast Recovery Area)は、Oracleデータベースにおいて重要なリカバリ関連ファイルを一元管理し、データベースのリカバリ作業を効率化するための領域です。この領域にはバックアップやアーカイブログ、スナップショット、フラッシュバックログなど、リカバリに必要なファイルが保存されます。FRAはリカバリの迅速化を目的としており、適切に設定することでデータベースの可用性を向上させることができます。
FRAの目的とメリット
FRAの目的は、バックアップやリカバリ関連のファイルを効率的に管理することです。FRAに関連する主なメリットは以下の通りです。
- 一元管理:バックアップやアーカイブログ、フラッシュバックデータなどのリカバリ関連のファイルを一つの場所に集めることで、ファイル管理が容易になります。これにより、リカバリ作業中に必要なファイルを迅速に特定できるため、ダウンタイムを最小限に抑えることが可能です。
- ストレージの効率化:FRAには設定されたサイズの上限があり、Oracleは自動的に古いファイルを削除して領域を確保します。これにより、ストレージの使用効率が向上し、過剰なファイル保存によるディスク容量不足を防ぐことができます。
- リカバリ作業の高速化:FRAに必要なすべてのリカバリファイルを格納することで、データベースのリカバリ作業が高速に実行されます。特に、Oracleのフラッシュバック機能を使用して、特定の時点にデータベースを戻す場合にFRAが大きな役割を果たします。
- バックアップ戦略の統合:FRAを使用することで、バックアップ戦略を統一的に管理できます。例えば、RMAN(Recovery Manager)を使用したバックアップは、FRAをターゲットとすることで自動的に格納されます。
FRAに保存される主なファイル
FRAに保存されるファイルは、データベースのリカバリやバックアップに関連するものが中心です。以下に、主なファイルとその役割を紹介します。
- アーカイブログファイル
アーカイブモードで運用されているOracleデータベースでは、オンラインログファイルが満杯になるたびに、その内容がアーカイブログとして保存されます。アーカイブログは、障害発生時にデータベースをリカバリするために使用されます。 - RMANバックアップファイル
RMANを使用してデータベース全体や特定の表領域、データファイルをバックアップした際、そのバックアップファイルがFRAに格納されます。 - フラッシュバックログ
フラッシュバック機能を有効にすると、Oracleは特定の時点にデータベースを戻すためのログをFRAに保存します。これにより、誤ったデータ変更が行われた場合などに、迅速に状態を復元できます。 - 制御ファイルのバックアップ
制御ファイルの自動バックアップ機能が有効になっている場合、RMANは制御ファイルのバックアップをFRAに格納します。 - スナップショットファイル
データベースのポイントインタイムリカバリを行う際、特定の時点のデータを保存するためにスナップショットが作成されます。これらのスナップショットもFRAに格納されます。
FRAの設定方法
FRAを使用するためには、いくつかの初期化パラメータを設定する必要があります。設定の手順は以下の通りです。
1. FRAのサイズを設定する
まず、FRAに割り当てるディスク容量を設定します。これには、DB_RECOVERY_FILE_DEST_SIZE
パラメータを使用します。以下の例では、FRAのサイズを100GBに設定しています。ALTER SYSTEM SET DB_RECOVERY_FILE_DEST_SIZE=100G SCOPE=BOTH;
FRAのサイズは、リカバリファイルの数や頻度に応じて適切に設定する必要があります。容量が不足すると、新しいバックアップやログの保存ができなくなる可能性があるため、適切なサイズを見積もることが重要です。
2. FRAの場所を指定する
次に、FRAを格納する場所を指定する必要があります。以下のコマンドを使用して、FRAのディレクトリを設定します。ALTER SYSTEM SET DB_RECOVERY_FILE_DEST='/path/to/FRA' SCOPE=BOTH;
このコマンドでは、/path/to/FRA
の部分をFRAを保存するディレクトリのパスに置き換えます。FRAは通常、専用のディスク領域やファイルシステムに設定することが推奨されます。
SQL> show parameter db_recovery_file_dest
NAME TYPE VALUE
------------------------------------ --------------------------------- ------------------------------
db_recovery_file_dest string
db_recovery_file_dest_size big integer 0
SQL> ALTER SYSTEM SET DB_RECOVERY_FILE_DEST_SIZE=100G SCOPE=BOTH;
システムが変更されました。
SQL> ALTER SYSTEM SET DB_RECOVERY_FILE_DEST='/home/oracle/fast_recovery_area' SCOPE=BOTH;
システムが変更されました。
SQL> show parameter db_recovery_file_dest
NAME TYPE VALUE
------------------------------------ --------------------------------- ------------------------------
db_recovery_file_dest string /home/oracle/fast_recovery_area
db_recovery_file_dest_size big integer 100G
3. アーカイブモードの設定(任意)
FRAを効果的に活用するためには、データベースをアーカイブモードにすることが推奨されます。以下のコマンドでアーカイブモードを有効化できます。SHUTDOWN IMMEDIATE;
STARTUP MOUNT;
ALTER DATABASE ARCHIVELOG;
ALTER DATABASE OPEN;
この設定により、オンラインログファイルがアーカイブされ、FRAに保存されるようになります。
FRAの管理と監視
FRAの運用を続けていくと、保存されるファイルの数が増え、ディスク容量を圧迫する可能性があります。FRAの状態を定期的に監視し、適切な管理を行うことが重要です。
1. FRAの使用状況を確認する
FRAの使用状況は、以下のSQLクエリで確認できます。SELECT * FROM V$RECOVERY_FILE_DEST;
このビューには、FRAの現在のサイズや使用量、残りの空き容量などが表示されます。これにより、容量が逼迫しているかどうかを定期的にチェックできます。
2. 不要なファイルの削除
FRAが満杯になった場合、Oracleは自動的に不要なファイルを削除して領域を確保しますが、手動で不要なファイルを削除することも可能です。RMANを使用して古いバックアップやアーカイブログを削除することができます。RMAN> DELETE OBSOLETE;
このコマンドは、既にリカバリに不要な古いバックアップファイルやアーカイブログを削除します。これにより、FRAのディスク容量を解放できます。
FRAのベストプラクティス
FRAを効果的に運用するためには、いくつかのベストプラクティスに従うことが推奨されます。
- 適切な容量を設定する
データベースのサイズやトランザクション量に応じて、FRAの容量を十分に確保します。特にアーカイブログやバックアップファイルが頻繁に生成される環境では、ディスク容量が逼迫しやすいため、容量の見積もりをしっかり行いましょう。 - 自動削除機能を活用する
FRAには古いファイルを自動的に削除する機能が備わっていますが、これに頼り過ぎず、定期的に手動でのクリーンアップも行いましょう。RMANを活用して不要なファイルを定期的に削除することで、リカバリ領域を常に最適な状態に保つことができます。 - 定期的な監視を行う
FRAの使用状況は定期的に確認し、容量が不足しそうな場合は早めに対策を講じます。また、適切なアラート設定を行い、FRAの容量が逼迫した際に通知を受け取れるようにしておくことが重要です。
まとめ
高速リカバリ領域(FRA)は、Oracleデータベースのバックアップおよびリカバリ戦略を効率的に管理するための重要な機能です。適切に設定し、運用することで、リカバリ作業の迅速化やストレージの効率的な利用が可能になります。特に、アーカイブログやRMANバックアップ、フラッシュバックログなどのリカバリ関連ファイルを一元管理できるため、データベースの可用性と信頼性を向上させるためには欠かせない要素です。
[参考]
バックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド 19c
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