Oracleデータベースを守る!アーカイブログモードの基礎とベストプラクティス

Oracle Master Bronze

アーカイブログモード(Archivelog Mode)は、Oracleデータベースにおいて、トランザクションのデータ変更を記録するREDOログファイルをバックアップし、将来のリカバリに備えるためのモードです。これにより、システムが障害を起こしても、失われたデータを元に戻すことが可能となります。

データベースの通常運用では、REDOログはデータベースに加えられた変更が格納され、時間が経つと新しいログが上書きされていきます。しかし、アーカイブログモードでは、上書き前のREDOログファイルを「アーカイブ(保管)」し、これを後で使用することにより、障害からの完全なデータリカバリが可能になります。

本記事では、アーカイブログモードの概要、設定方法、メリット・デメリット、そして実際の運用シナリオについて詳しく解説します。


アーカイブログモードとノーアーカイブログモード

Oracleデータベースには、以下の2つのREDOログ運用モードがあります。

  • アーカイブログモード(Archivelog Mode)
  • ノーアーカイブログモード(Noarchivelog Mode)

ノーアーカイブログモード(Noarchivelog Mode)

デフォルトの設定では、データベースはノーアーカイブログモードで動作しています。このモードでは、REDOログファイルがいっぱいになると、自動的に新しいREDOログで上書きされます。このため、過去のデータ変更履歴は残らず、障害が発生した際には、直前のバックアップまでしかデータを戻すことができません。

ノーアーカイブログモードの主な特徴は以下の通りです:

  • ディスク容量の節約ができる
  • 障害発生時に直近のバックアップからのリカバリのみが可能
  • データ損失のリスクが高い

アーカイブログモード(Archivelog Mode)

アーカイブログモードでは、REDOログがいっぱいになると、新しいログで上書きされる前に、アーカイブREDOログとして保管されます。この保管されたログを使用することで、障害が発生しても、バックアップ後に行われたすべてのトランザクションをリカバリすることが可能です。

アーカイブログモードの主な特徴は以下の通りです:

  • 障害が発生しても、直近のバックアップ以降のデータを含めて完全にリカバリ可能
  • アーカイブログの保存にはディスク容量が必要
  • データの保全性が高い

アーカイブログモードのメリット

アーカイブログモードを設定することにより、データベース運用には多くのメリットがあります。主な利点を見てみましょう。

1. 完全なデータリカバリ

アーカイブログモードは、障害や人為的ミスに対して最も強力なリカバリ手段を提供します。通常、バックアップ後のすべてのトランザクションがアーカイブREDOログに記録されるため、障害発生時でもデータベースを完全に元に戻すことが可能です。これにより、ビジネスの中断時間を最小限に抑えることができます。

2. データの保持期間を伸ばす

アーカイブログモードを使用すると、データの変更履歴を長期間保持できます。これにより、例えば1か月前のデータ状態に戻すことが必要な場合でも、アーカイブログを使用してその時点の状態を復元できます。

3. 増分バックアップが可能

アーカイブログモードを有効にすると、増分バックアップが可能となります。増分バックアップは、完全バックアップと比べて、ディスク容量や時間を節約できるため、効率的なデータ保護方法の一つです。これにより、バックアップ運用の柔軟性が向上します。


アーカイブログモードのデメリット

もちろん、アーカイブログモードにもいくつかのデメリットがあります。データベースの規模や運用環境に応じて、慎重に検討する必要があります。

1. ディスク容量の消費

アーカイブREDOログを保存するためには、追加のディスクスペースが必要です。特に、トランザクションが頻繁に発生する環境では、大量のアーカイブログが生成され、ディスク容量を圧迫することがあります。この問題に対処するため、定期的にログをバックアップし、不要なログを削除する必要があります。

2. 設定と管理の複雑さ

アーカイブログモードを使用すると、REDOログの管理が複雑化します。アーカイブログの適切な保存場所を確保し、ログが消失しないように運用するための管理体制を整える必要があります。また、運用中にアーカイブログ領域が満杯になると、データベースが停止するリスクもあります。

3. パフォーマンスへの影響

REDOログをアーカイブする処理には、多少のシステムリソースが消費されます。大規模なトランザクションが多発するデータベースでは、ログのアーカイブによりパフォーマンスが低下する可能性があります。ただし、最新のハードウェアを活用することで、この影響を最小限に抑えることができます。


アーカイブログモードの設定方法

アーカイブログモードを設定する手順を以下に示します。設定には、データベース管理者権限が必要です。

1. データベースの停止

まず、アーカイブログモードを有効にするためには、データベースを一時的に停止する必要があります。

SHUTDOWN IMMEDIATE;

2. アーカイブログモードの有効化

次に、データベースをマウント状態にし、アーカイブログモードを有効にします。

STARTUP MOUNT;
ALTER DATABASE ARCHIVELOG;

3. データベースの起動

アーカイブログモードが有効になった後、データベースを通常通り起動します。

ALTER DATABASE OPEN;

4. アーカイブログの場所を設定

アーカイブREDOログの保存先ディレクトリを設定することも重要です。以下のコマンドで保存先を指定できます。

ALTER SYSTEM SET log_archive_dest_1='LOCATION=/u01/app/oracle/archivelog';

これで、REDOログがアーカイブされ、指定したディレクトリに保存されます。

SQL> archive log list
データベース・ログ・モード 非アーカイブ・モード ★ノーアーカイブログモード
自動アーカイブ 使用禁止
アーカイブ先 /u01/app/oracle/product/19.0.0/dbhome_1/dbs/arch
最も古いオンライン・ログ順序 10
現行のログ順序 12
SQL> shutdown immediate ★データベース停止
データベースがクローズされました。
データベースがディスマウントされました。
ORACLEインスタンスがシャットダウンされました。
SQL> startup mount ★マウントで起動
ORACLEインスタンスが起動しました。

Total System Global Area 1543500120 bytes
Fixed Size 8925528 bytes
Variable Size 889192448 bytes
Database Buffers 637534208 bytes
Redo Buffers 7847936 bytes
データベースがマウントされました。
SQL> alter database archivelog; ★アーカイブログモードへ移行

データベースが変更されました。

SQL> alter database open;

データベースが変更されました。

SQL> ALTER SYSTEM SET log_archive_dest_1='LOCATION=/u01/app/oracle/archivelog';

システムが変更されました。

SQL> archive log list
データベース・ログ・モード アーカイブ・モード ★アーカイブログモードに変わっている
自動アーカイブ 有効
アーカイブ先 /u01/app/oracle/archivelog
最も古いオンライン・ログ順序 10
アーカイブする次のログ順序 12
現行のログ順序 12
SQL>

アーカイブログモードの運用上のベストプラクティス

アーカイブログモードを使用する際には、以下のベストプラクティスに従うことで、より安全で効率的なデータベース運用が可能となります。

1. 定期的なバックアップの実施

アーカイブREDOログはリカバリに役立つ重要なデータですが、これだけでは不十分です。データベース全体のバックアップを定期的に行い、アーカイブREDOログと併せて管理することで、データの完全性を確保しましょう。

2. ディスク容量の監視

アーカイブREDOログは蓄積されるため、ディスク容量の監視が重要です。容量が不足しないよう、定期的に古いログを削除し、バックアップを外部ストレージに移すことが推奨されます。

3. アーカイブログ領域の冗長化

アーカイブREDOログの保存先が一箇所だけでは、保存領域の障害時にすべてのログが失われる可能性があります。可能であれば、複数の場所にアーカイブログを保存し、冗長性を持たせることでリスクを低減できます。


まとめ

アーカイブログモードは、Oracleデータベースのデータ保護において非常に重要な役割を果たします。このモードを有効にすることで、障害発生時にデータ損失を最小限に抑えることができ、ビジネスの継続性を確保することができます。ディスク容量の問題や管理の煩雑さはありますが、適切に運用すれば、データベースの安全性を大幅に向上させることができます。

初心者の方も、基本的な操作を理解することで、アーカイブログモードを安全に利用できるようになります。データの重要性を理解し、しっかりとしたバックアップとリカバリ戦略を立てることが、効果的なデータベース管理の鍵となります。

[参考]
データベース管理者ガイド – 12 アーカイブREDOログ・ファイルの管理

コメント

タイトルとURLをコピーしました