Oracleデータベースでは、メモリー管理が性能の向上や安定性の確保において非常に重要です。この記事では、Oracleのメモリー管理について、自動メモリー管理(Automatic Memory Management、AMM)、自動共有メモリー管理(Automatic Shared Memory Management、ASMM)、手動管理の3つの方式とその設定方法を解説します。
1. メモリー管理の概要
Oracleデータベースは、主にSGA(System Global Area)とPGA(Program Global Area)のメモリーを使用します。これらを最適化することで、パフォーマンスの向上が期待できます。
- SGA(System Global Area):データベースインスタンス全体で共有されるメモリー領域で、共有プール、データベースバッファキャッシュ、REDOログバッファなどのコンポーネントが含まれます。
- PGA(Program Global Area):各セッションに割り当てられるメモリー領域で、ソートやハッシュ結合といった操作が行われます。
Oracleには、自動メモリー管理(AMM)、自動共有メモリー管理(ASMM)、および手動メモリー管理の3つのメモリー管理モードがあり、それぞれ異なる方式でSGAとPGAを制御します。
2. 自動メモリー管理(AMM)
AMMは、SGAとPGAのサイズを自動的に管理し、データベースのパフォーマンスを最適化するために導入された機能です。Oracle 11g以降のバージョンで利用可能です。
- AMMの利点:AMMを使用することで、管理者は手動でサイズを調整する手間を省き、Oracleが最適な割り当てを自動で行います。
- 有効化方法
AMMを有効化するには、MEMORY_TARGET
とMEMORY_MAX_TARGET
の初期化パラメータを設定します。以下は、その設定例です。ALTER SYSTEM SET MEMORY_TARGET = 4G SCOPE=SPFILE;
ALTER SYSTEM SET MEMORY_MAX_TARGET = 4G SCOPE=SPFILE;
この設定を行った後、データベースを再起動するとAMMが有効になります。 - 無効化方法
AMMを無効化する場合、MEMORY_TARGET
とMEMORY_MAX_TARGET
を0に設定します。これにより、手動またはASMMに切り替わります。ALTER SYSTEM SET MEMORY_TARGET = 0 SCOPE=SPFILE;
ALTER SYSTEM SET MEMORY_MAX_TARGET = 0 SCOPE=SPFILE;
この設定を行った後、データベースを再起動するとAMMが無効になります。
3. 自動共有メモリー管理(ASMM)
ASMMでは、SGA内の各コンポーネント(共有プール、データベースバッファキャッシュ、REDOログバッファなど)のサイズを自動的に調整します。
- ASMMの利点:SGAの個別の設定をOracleが管理し、システム全体のパフォーマンスを最適化します。
- 有効化方法
ASMMを有効化するには、SGA_TARGET
を設定し、SGA全体のサイズをOracleが管理するようにします。ALTER SYSTEM SET SGA_TARGET = 2G SCOPE=SPFILE;
ALTER SYSTEM SET SGA_MAX_SIZE = 2G SCOPE=SPFILE;
この設定を行った後、データベースを再起動するとASMMが有効になります。 - 無効化方法
ASMMを無効化する場合は、SGA_TARGET
を0に設定し、各コンポーネントを手動で設定します。ALTER SYSTEM SET SGA_TARGET = 0 SCOPE=BOTH;
4. 手動メモリー管理
手動メモリー管理では、SGAとPGAの各コンポーネントのサイズを直接設定します。これにより、細かい制御が可能ですが、負荷が変動する環境では調整が必要です。
- 設定方法
それぞれのコンポーネントに対して個別にパラメータを設定します。ALTER SYSTEM SET SHARED_POOL_SIZE = 500M SCOPE=BOTH;
ALTER SYSTEM SET DB_CACHE_SIZE = 1G SCOPE=BOTH;
ALTER SYSTEM SET PGA_AGGREGATE_TARGET = 1G SCOPE=BOTH;
5. 各メモリー構成要素の概要
Oracleのメモリー管理の主要な構成要素について理解することで、適切な設定とトラブルシューティングが可能になります。
- 共有プール(Shared Pool)
SQLやPL/SQLの解析結果をキャッシュし、再利用可能にするため、SQL文の解析負荷が低減します。- 設定例:
ALTER SYSTEM SET SHARED_POOL_SIZE = 500M SCOPE=BOTH;
- 設定例:
- データベースバッファキャッシュ(Database Buffer Cache)
頻繁にアクセスされるデータをキャッシュすることで、ディスクI/Oが減少し、データアクセスが高速化されます。- 設定例:
ALTER SYSTEM SET DB_CACHE_SIZE = 1G SCOPE=BOTH;
- 設定例:
- REDOログバッファ(Redo Log Buffer)
データの変更を一時的に保存し、リカバリの際に役立ちます。- 設定例:
ALTER SYSTEM SET LOG_BUFFER = 128M SCOPE=SPFILE;
※設定を変更後再起動が必要。
- 設定例:
6. メモリー管理のベストプラクティス
効果的なメモリー管理を行うには、適切なモードを選択し、監視と調整を継続することが重要です。
- モード選択:ワークロードや運用要件に応じて、最適なメモリー管理モード(AMM、ASMM、手動)を選択します。
- 監視ツールの活用:Oracle Enterprise Manager(OEM)や
V$SGA
ビュー、V$PGA
ビューを使用してリアルタイムのメモリー状況を把握し、必要に応じてパラメータの見直しを行います。 - アドバイザの使用:メモリー管理に関するアドバイザ(
V$MEMORY_TARGET_ADVICE
、V$PGA_TARGET_ADVICE
)を活用して、最適な設定値の確認とチューニングを行います。
7. トラブルシューティングとメモリー管理の問題
Oracleのメモリー管理における代表的なエラーや問題とその対処法を以下に示します。
- ORA-4031エラー:共有プールなどのSGAメモリー不足が原因で発生します。
対応策:SHARED_POOL_SIZE
の増加や、SQLのチューニング、不要なオブジェクトのパージを検討します。 - メモリーリーク:セッションの終了後もメモリーが解放されない場合があるため、Oracleサポートに問い合わせてパッチを適用することが推奨されます。
8. まとめ
Oracleデータベースにおけるメモリー管理は、データベースのパフォーマンスと安定性を支える重要な要素です。AMMやASMMといった自動メモリー管理の機能を理解し、適切に設定することで、効率的なメモリー利用が可能になります。継続的な監視とアドバイザの活用を通じて、データベースのパフォーマンスを最適化し、安定した運用を維持しましょう。
[参考]
Oracle Database パフォーマンス・チューニング・ガイド 19c
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