Oracleデータベースの運用において、アラートログは重要な情報を提供するログファイルで、データベースの起動・停止、構成の変更、エラーメッセージなどを記録します。特にエラー発生時や運用上の重要な変更履歴を把握する際に役立つため、アラートログの確認・管理はデータベース管理者にとって欠かせません。このガイドでは、アラートログの基本から、エラーメッセージ例、トレースファイルの管理までを詳しく解説します。
1. アラートログとは?
アラートログは、Oracleデータベースで発生する重要なイベントやエラーメッセージが記録されるファイルで、通常「alert_<インスタンス名>.log」という名前で保存されています。Oracle Database 11g以降では自動診断リポジトリ(ADR)に格納され、以下のようなイベントが記録されます。
- インスタンスの起動・停止
- 表領域の追加や拡張
- 各種エラーメッセージ(例:ORA-エラー)
- アーカイブログの切り替え
- RMANバックアップやリカバリのメッセージ
- トレースファイルの生成通知
- その他の警告やイベント情報
アラートログのデフォルト保存先は以下の通りです:
- Oracle Database 11g以降:
$ORACLE_BASE/diag/rdbms/<DB_NAME>/<SID>/trace/
2. アラートログの確認方法
a. ファイルを直接確認する
アラートログはテキストファイルであるため、UNIXやLinux環境では以下のコマンドで内容を確認できます。
- 最新のログを表示:
tail -f alert_<インスタンス名>.log
- 過去のログを表示:
cat alert_<インスタンス名>.log
b. SQL*Plusでの確認
SQL*Plusを使用して、V$DIAG_INFO
ビューからアラートログのパスを確認し、直接参照できます。
SELECT VALUE FROM V$DIAG_INFO WHERE NAME = 'Diag Trace';
c. ADRCIによるリアルタイム表示
Oracle Database 11g以降では、ADRCI(Automatic Diagnostic Repository Command Interpreter)を使用してリアルタイムでアラートログを確認できます。
adrci
show alert -tail -f
show alert
コマンドを使用すると、最新のエラーメッセージやイベントをリアルタイムで監視できます。
3. アラートログのエラーメッセージ例と対応方法
エラーメッセージ例1: ORA-01555 “スナップショットが古すぎます”
Tue Nov 07 10:23:45 2023
Errors in file /u01/app/oracle/diag/rdbms/orcl/trace/orcl_ora_12345.trc:
ORA-01555: snapshot too old: rollback segment number with name "RB_SEG" too small
原因: 長時間実行されるクエリ中に、UNDOセグメントが再利用され、古いスナップショットにアクセスできなくなるためです。
対応方法:
- UNDOテーブルスペースのサイズを増やし、長時間のクエリが影響を受けないようにします。
- クエリの実行時間を短縮し、トランザクションを最適化します。
エラーメッセージ例2: ORA-00060 “デッドロックが検出されました”
Wed Nov 08 14:55:23 2023
Errors in file /u01/app/oracle/diag/rdbms/orcl/trace/orcl_ora_67890.trc:
ORA-00060: deadlock detected while waiting for resource
原因: 2つ以上のトランザクションが互いにリソースをロックし、進行できなくなった場合に発生します。
対応方法:
- デッドロックの原因を特定し、コードやトランザクションのロック順序や範囲を見直して競合を避けます。
エラーメッセージ例3: ORA-00257 “アーカイブエラー”
Fri Nov 10 11:42:17 2023
ORA-00257: archiver error. Connect internal only, until freed.
Additional information: archiver stuck. Need to archive logs.
原因: アーカイブログ領域がいっぱいになり、新たなログを記録できない状態です。
対応方法:
- 高速リカバリ領域(FRA)のディスク容量を増やし、アーカイブ領域に余裕を持たせます。
- 古いアーカイブログや不要なバックアップを削除します。
4. トレースファイル出力に関するメッセージとその管理
アラートログには、データベースのエラーやパフォーマンスの問題に関する詳細な情報が記録される「トレースファイル」の生成通知も記録されます。以下にトレースファイル出力時のメッセージ例と対処法を紹介します。
トレースファイル出力のメッセージ例
トレースファイルは、データベース内で深刻なエラーやパフォーマンスに関わる問題が発生した際に、詳細な情報を提供するために生成されます。アラートログには次のようにトレースファイルの生成が通知されます。
例1: 内部エラーによるトレースファイルの生成(ORA-00600エラー)
Thu Nov 09 09:15:10 2023
Errors in file /u01/app/oracle/diag/rdbms/orcl/trace/orcl_ora_45678.trc:
ORA-00600: internal error code, arguments: [kdsgrp1], [1], [], [], [], [], [], []
原因: ORA-00600エラーはOracleデータベースの内部エラーで、異常状態が発生したことを示します。
対応方法:
- トレースファイル(上記パスに保存)を確認し、詳細なエラー情報を調査します。
- トレースファイルの内容をOracleサポートに提供し、必要な支援を受けることが推奨されます。
例2: エラー発生時のトレースファイル生成通知
Wed Nov 08 15:30:23 2023
Errors in file /u01/app/oracle/diag/rdbms/orcl/trace/orcl_ora_78910.trc:
ORA-07445: exception encountered: core dump [ACCESS_VIOLATION] [kxsbbspc()+116]
原因: ORA-07445エラーは、データベースプロセスが異常終了した場合に発生するエラーで、アクセス権違反などの深刻な問題を示しています。
対応方法:
- トレースファイルを確認し、エラー内容を調査します。必要に応じて、ファイルをOracleサポートへ提供し、詳細な調査を依頼します。
トレースファイルの管理
トレースファイルはエラー時に自動生成され、問題の発見に役立つ情報を提供しますが、頻繁に発生するとディスク容量を圧迫する可能性があります。トレースファイルを管理する方法の一つとして、定期的にトレースファイルをバックアップし、不要なファイルを削除することが推奨されます。
find /u01/app/oracle/diag/rdbms/orcl/trace/ -name "*.trc" -mtime +30 -exec rm {} \;
上記コマンドで、30日以上経過したトレースファイルを削除することができます。
5. データベースに関する変更時のメッセージ例
アラートログには、データベース管理における各種変更に関するメッセージも記録され、これらの情報は監査や運用履歴の把握に役立ちます。
例1: データベースの起動
Tue Nov 07 10:00:00 2023
Starting up ORACLE RDBMS Version 19.0.0.0.0 - Production
Database mounted.
Database opened.
例2: 表領域の追加
Tue Nov 07 11:15:35 2023
ALTER TABLESPACE users ADD DATAFILE '/u01/app/oracle/oradata/ORCL/users02.dbf' SIZE 100M
例3: アーカイブログの切り替え
Tue Nov 07 11:30:12 2023
ARC0: Beginning to archive log
Current log# 3 seq# 49 mem# 0: /u01/app/oracle/oradata/ORCL/redo03.log
6. アラートログの管理と保守
アラートログは長期間の運用によりサイズが大きくなるため、定期的なバックアップやファイルのローテーションが必要です。
mv alert_<インスタンス名>.log alert_<インスタンス名>_backup_YYYYMMDD.log
バックアップ後、新しいアラートログが自動的に生成されます。古いログは安全な場所に保管し、参照用に管理しましょう。
まとめ
アラートログとトレースファイルは、データベースの運用状況や問題の特定において重要な役割を果たします。本記事で紹介したエラーメッセージ例やトレースファイルの管理方法を活用して、迅速なトラブルシューティングと安定したデータベース運用を目指しましょう。適切なログ管理により、データベースの安定性と信頼性を維持することができます。
[参考]
データベース・エラー・メッセージ
コメント