Oracleデータベースのストレージの基礎、「データブロック」について、初心者が陥りやすい疑問点を丁寧に解説します。行データの格納方法、パフォーマンス最適化のコツ、実務での確認方法を図解付きで詳しく説明していきます。
リンク
リンク
リンク
1. データブロックの基礎を学ぼう
データブロックは、Oracleデータベースにおける「データの最小格納単位」です。これを理解すれば、効率的なデータベース運用への一歩を踏み出せます。
図1: Oracleストレージ階層
データファイル
└ エクステント(Extent)
└ データブロック(Data Block)
- データファイル: 物理的なデータの格納場所。
- エクステント: データブロックのまとまり。拡張単位。
- データブロック: 行データが実際に格納される最小単位。
豆知識: データブロックのサイズ(例: 4KB, 8KB)はデータベース作成時に決定し、変更は簡単ではありません。
2. データブロックの構造を徹底解説
データブロックは、以下のような4つの領域に分かれています。
図2: データブロック構造
+-----------------------------+
| ヘッダー領域 | ← 管理情報
+-----------------------------+
| テーブル・行ディレクトリ | ← 行の位置情報
+-----------------------------+
| データ領域 | ← 行データ本体
+-----------------------------+
| 空き領域 | ← 新しいデータ用スペース
+-----------------------------+
各領域の詳細
- ヘッダー領域
- トランザクション情報やデータブロックの識別子を記録します。
- サイズは固定で、一般的に数十バイト程度。
- テーブル・行ディレクトリ
- 行データの位置を格納。
- 検索効率を向上させる重要な役割を果たします。
- データ領域
- 行データ本体(列データ)が格納される部分。
- 空き領域
- 新しい行の挿入や既存行の更新用スペース。
- 空き領域が不足すると「行の移動」や「行の連鎖」が発生します。
3. 行データの格納プロセス
行データがどのようにデータブロックに格納されるのか、具体的な例を見ていきましょう。
図3: 行データ格納の例
+-----------------------------+
| ヘッダー領域 |
+-----------------------------+
| 行ディレクトリ |
| 行1: 位置情報 |
| 行2: 位置情報 |
+-----------------------------+
| 行1ヘッダー | 列1 | 列2 |
+-----------------------------+
| 行2ヘッダー | 列1 | 列2 |
+-----------------------------+
| 空き領域 |
+-----------------------------+
ポイント解説
- 行ヘッダー
- 行データの状態や長さ、トランザクションIDを保持します。
- 列データ
- 各列の値が順番に格納されます。
- NULL値は記録されず、空間を節約します。
- 空き領域
- データの挿入・更新用スペース。PCTFREEで割合を設定可能です。
4. 行の連鎖と移動の仕組み
データブロックの空き領域が不足すると、次の問題が発生します。
4.1 行の連鎖(Row Chaining)
行データが1つのデータブロックに収まりきらない場合、複数のブロックにまたがって格納されます。
図4: 行の連鎖
ブロック1 ブロック2
+------------------+ +------------------+
| 行1(部分) | → | 行1(残り) |
+------------------+ +------------------+
発生原因
- 行データが非常に大きい場合(例: CLOB型データ)。
- 適切なデータブロックサイズが選択されていない場合。
4.2 行の移動(Row Migration)
行データのサイズが増加し、元のデータブロックに収まりきらなくなった場合、別のブロックに移動します。
図5: 行の移動
ブロック1 ブロック2
+------------------+ +------------------+
| ポインタ → | | 行1(移動先) |
+------------------+ +------------------+
問題点
- パフォーマンス低下(データ取得に複数ブロックを読み込む必要がある)。
- 不要なI/Oの増加。
5. パフォーマンス最適化のコツ
データブロックを効率よく利用するためのベストプラクティスを紹介します。
5.1 PCTFREEを最適化
- PCTFREEはデータブロック内に確保する空き領域の割合です。
- 更新頻度が高いテーブルでは、PCTFREEを高めに設定します。
5.2 適切なデータブロックサイズを選択
- 行データが大きい場合は、データブロックサイズを8KB以上に設定します。
5.3 データの監視とチューニング
以下のSQLでデータブロックの状態を確認し、必要に応じて調整します。
6. データブロックの確認方法
以下のSQLを使って、データブロックサイズや行移動の状態を調査できます。
データブロックサイズの確認
SELECT value FROM v$parameter
WHERE name = 'db_block_size';
行の連鎖・移動の確認
SELECT table_name, chain_cnt
FROM dba_tables
WHERE chain_cnt > 0;
7. 実務で活用するヒント
- モニタリングを習慣化
定期的に行の連鎖や移動を監視し、パフォーマンス低下の兆候を早期に発見しましょう。 - ストレージ設定を再検討
データブロックサイズやPCTFREEの設定を適切に見直すことで、パフォーマンスを向上させられます。 - エクステント管理も考慮
行連鎖が頻発する場合は、セグメントのエクステントサイズを見直すのも効果的です。
8. まとめ
データブロックの行データ格納の仕組みを理解することは、Oracleデータベースのパフォーマンス最適化の第一歩です。効率的な設定と監視で、安定したデータベース運用を目指しましょう。
[参考]
Oracle Database データベース概要 19c
【初心者向け】Oracle SQLでの表の作成、INSERT、UPDATE、DELETEをマスター
データベースを操作する際、テーブル(表)を作成し、データを追加、更新、削除することは基本中の基本です。Oracle SQLは、強力かつ柔軟なデータベース管理システムであり、多くの企業で使われています。本記事では、Oracle SQLを使って...
コメント