行移行と行連鎖を解説

Oracle Master Silver

データベースのパフォーマンス問題を解決するためには、「行移行」と「行連鎖」の理解が欠かせません。この記事では、初心者の方でもすぐに実践できる解説と、具体例を交えて深掘りしていきます。

1. 行移行と行連鎖とは?

オラクルデータベースで、テーブルの行データは通常1つのデータブロックに収まります。しかし、以下の条件で問題が発生します。

  • 行移行 (Row Migration)
    行が更新されてサイズが拡大し、元のブロックに収まらなくなった場合。
  • 行連鎖 (Row Chaining)
    行が初めから1つのブロックに収まらない場合。

これらの問題により、クエリのパフォーマンスが低下します。


2. 行移行と行連鎖が引き起こす問題

行移行の問題点

  • 追加のI/O: 元のブロックから移行先ブロックへのポインタをたどる必要がある。
  • ランダムアクセスの遅延: ポインタをたどることで取得速度が遅くなる。

行連鎖の問題点

  • 複数ブロックへのアクセス: データが複数ブロックにまたがるため、I/O回数が増加。
  • クエリ全体の遅延: フルスキャン時に顕著にパフォーマンスが低下。

3. 行移行の具体例と仕組み

行移行は、行データが更新され、元のブロックに収まらなくなったときに発生します。

具体例: 行移行の流れ

1.初期状態:
行データはブロックAに格納され、空き領域があります。

[ブロックA]
+---------------------+
| 行データ | 空き領域 |
+---------------------+

2.更新操作:
行データが更新され、サイズが拡大。空き領域では収まりません。

[ブロックA]
+---------------------+
| ポインタ | <-- 移行先を指すポインタ
+---------------------+

[ブロックB]
+---------------------+
| 更新後の行データ |
+---------------------+

    ポイント

    • 行データが「ポインタ」で間接的に参照される。
    • 更新頻度が高いテーブルで発生しやすい。

    4. 行連鎖の具体例と仕組み

    行連鎖は、行データが初めから1つのブロックに収まらない場合に発生します。

    具体例: 行連鎖の流れ

    初期状態:
    行データが大きすぎるため、複数のブロックに分割されます。

    [ブロックA]
    +---------------------+
    | 行データの一部 |
    +---------------------+

    [ブロックB]
    +---------------------+
    | 残りの行データ |
    +---------------------+

      ポイント

      • LOBデータや長い文字列で発生しやすい。
      • フルスキャン時に特にパフォーマンスが低下。

      5. 問題の診断方法

      行移行や行連鎖を特定するためには、以下のSQLを使用します。

      ANALYZE TABLE employees LIST CHAINED ROWS;

      手順

      1. 上記のコマンドを実行します。
      2. 結果は CHAINED_ROWS テーブルに格納されます。
      3. 問題のある行を確認します。

      SELECT * FROM CHAINED_ROWS;

      6. 防止するための実践的なアプローチ

      1. PCTFREEの適切な設定

      ブロック内に空き領域を確保することで、行移行を防ぎます。

      CREATE TABLE employees (
      emp_id NUMBER,
      emp_name VARCHAR2(100),
      emp_description VARCHAR2(1000)
      ) PCTFREE 20;
      • 推奨値: 更新頻度が高いテーブルは 15~30%。

      2. ブロックサイズの調整

      行連鎖を防ぐため、ブロックサイズを適切に選択します。

      • 小さいデータ: ブロックサイズを小さく設定。
      • 大きなデータ: ブロックサイズを16KB以上に設定。

      3. テーブル設計の見直し

      長い文字列やLOBデータは、別のLOBセグメントに分離します。

      4. 監視とメンテナンス

      定期的に ANALYZE TABLE を実行し、行移行と行連鎖をチェックします。


      7. 修正方法と成功事例

      行移行を解消する例

      -- 問題の確認
      ANALYZE TABLE employees LIST CHAINED ROWS;

      -- テーブルを再編成
      CREATE TABLE new_employees AS SELECT * FROM employees;
      DROP TABLE employees;
      RENAME new_employees TO employees;

      -- PCTFREEを設定して再作成
      ALTER TABLE employees PCTFREE 20;

      -- 確認
      ANALYZE TABLE employees LIST CHAINED ROWS;

      8. まとめ

      行移行と行連鎖は、適切な設計と設定によって予防可能です。以下のポイントを実践しましょう。

      重要なポイント

      • 行移行を防ぐ: PCTFREEの適切な設定と更新頻度の分析。
      • 行連鎖を防ぐ: データ型選択とブロックサイズの最適化。
      • 定期的な監視: 問題を早期発見し、修正する。

      チェックリスト

      項目実践状況メモ
      PCTFREE設定を確認したか?更新頻度に基づく設定
      ブロックサイズを最適化したか?大きなデータに対応
      定期的な監視を行ったか?定期的にリストアップ

      行移行や行連鎖を管理し、パフォーマンスが安定したデータベースを構築しましょう!

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