~“なんとなく割り当てる”からの脱却~
■ はじめに:なぜメモリ設計がそれほど重要なのか?
Oracleデータベースの安定運用において、メモリ設計は最重要項目の1つです。
適切なメモリが確保されていれば、データアクセスの多くがキャッシュで処理され、SQLは高速に応答します。
一方、メモリ設計が不十分だった場合、どんなにインデックスやSQLをチューニングしても改善しないことがあります。
Oracleは内部で多くのワークメモリを使用しており、それが不足するとI/Oやパースのコストが激増し、「急に遅くなった」「バッチが終わらない」といった事態を招きます。
本記事では、メモリ設計の失敗がどのような影響を与えるのかを図解とともに紹介し、なぜ初期設計が鍵を握るのかを具体的に解説します。
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■ Oracleのメモリ構成と設計対象
Oracleでは、主に2種類のメモリを設計・調整する必要があります。
| 種別 | 説明 |
|---|---|
| SGA(System Global Area) | 共有メモリ。データキャッシュ、SQL解析結果、REDOログバッファ等 |
| PGA(Program Global Area) | 各セッションのワーク領域。ソート、結合、集計などに使用 |
📘 図解:Oracleのメモリ構成(簡易図)
┌─────────────────────┐
│ Oracle インスタンス │
└─────────────────────┘
▲ ▲
┌──────────────┐ ┌──────────────┐
│ SGA │ │ PGA │
└──────────────┘ └──────────────┘
┌──共有キャッシュ ──┐ ┌── ソート・結合処理 ──┐
■ 適切なメモリ設計を怠ると何が起こるのか?
☠ よくあるメモリ設計ミスとその影響
🔻 パターン①:SGA(特にBuffer Cache)が不足している
🔴 結果:ディスクI/Oが激増 → SQLが遅延
SELECT * FROM orders WHERE customer_id = 1001;
↓ Buffer Cache にブロックが存在しない
→ 毎回ディスクアクセス → SQLが遅くなる!
- SQLはキャッシュされない
- 読み込みが都度ディスクへ → I/Oがボトルネック化
- 結果、全体的なレスポンスが低下
🔻 パターン②:Shared Poolが小さい
🔴 結果:SQLのハードパースが多発 → CPU負荷・競合上昇
- SQL解析結果が保持できず、毎回パース(=ハードパース)
- パース競合が発生し、Library Cacheのラッチがボトルネックに
- CPU使用率が高止まり、アプリケーションが詰まる
🔻 パターン③:PGAが不足
🔴 結果:ソートやJOINでディスク(TEMP)を使用 → 遅延・エラー
PGA不足 → ソート処理を TEMP表領域で実施
↓ Oracleは一時表領域に依存
→ TEMP表領域が肥大化 or ORA-01652(拡張不能)エラー
- ソート、GROUP BY、ハッシュ結合の全てが遅くなる
- 一時表領域の容量不足によるSQLエラーも頻発
🔻 パターン④:SGA+PGAの合計がOSメモリを超えている
🔴 結果:スワップ発生 → DBがフリーズ、OSダウンも
- Oracleは物理メモリを大量に使用するため、OSメモリの考慮が必要
- スワップが始まると遅延では済まない、障害レベルの影響
- 遅延、セッション切断、アプリ障害、最悪OS再起動に至る
■ なぜ適切なメモリ設計が必要なのか?
✅ Oracleは「メモリ先渡し」モデルである
Oracleはメモリを“必要になってから確保する”のではなく、起動時に定義済みサイズを使って動作する設計です。
つまり、
「設計時点の見積もりが誤っていると、運用時に致命傷になる」
という特徴があります。
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✅ パフォーマンスの7割はメモリ次第
SQLチューニングもインデックスも重要ですが、そもそも処理に必要なメモリが足りなければ性能は出ません。
例えば:
- PGAが足りなければ、どんなにチューニングしたSQLもTEMPに逃げて遅くなる
- Buffer Cacheが小さければ、毎回ディスクアクセスで応答が不安定
よって、メモリ設計は「全体最適」を実現するための前提条件です。
■ 推奨される設計の考え方
| 項目 | 推奨値・設計観点 |
|---|---|
| SGA_TARGET | 全体メモリの60〜70%を目安に。AWR等でBuffer Cacheヒット率を確認 |
| PGA_AGGREGATE_TARGET | 同時接続数×1〜2MBから逆算。ソートやJOINの多さも加味 |
| OSメモリとのバランス | Oracle以外のプロセス(監視・ログ等)も考慮する |
| AMMの是非 | 本番では予測困難なため非推奨。SGA/PGA分離設計が一般的 |
■ 適切なモニタリングで設計ミスを防ぐ
以下のSQLで定期的に使用状況を確認し、設計が現実にマッチしているかをチェックしましょう。
-- SGA/PGAの設定確認
SELECT name, value/1024/1024 AS MB
FROM v$parameter
WHERE name IN ('sga_target', 'pga_aggregate_target');
-- PGAの実使用量
SELECT name, ROUND(value/1024/1024, 2) AS MB
FROM v$pgastat
WHERE name IN ('total PGA allocated', 'maximum PGA allocated');
■ まとめ
| ポイント | 解説 |
|---|---|
| 設計ミスはSQL遅延やI/O肥大の主因になる | 特にPGA不足はTEMP肥大化を引き起こしやすい |
| Oracleは起動時にメモリを確保するため、初期設計が重要 | 後からの調整は再起動やSPFILE変更を伴うことが多い |
| 正しく設計すれば、SQL・I/O・安定性のすべてに良い影響 | 特に長期運用するシステムでは「根本対策」となる |
■ おわりに:良い設計は、トラブル対応のいらない世界を作る
メモリ設計は、目に見えにくく後回しにされがちです。
しかし、パフォーマンスの裏側には必ずメモリ資源が関わっています。
初期に時間をかけてでも、適切な配分と設計根拠を持つこと。
それが、10年使い続けられる堅牢なOracle環境を実現する第一歩です。
[参考]
Oracle Database データベース開発ガイド 19c




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