Oracleの待機イベントとは？v$sessionやv$system_eventの見方と実例解説

パフォーマンスチューニングを行ううえで、「待機イベント（Wait Event）」の理解は欠かせません。この記事では、待機イベントの概要から、よく使われる動的パフォーマンスビュー（v$session、v$system_eventなど）の見方、実際にロックをかけて待機イベントを観察する手順まで、図解とSQL付きで丁寧に解説します。

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待機イベントとは？
代表的な待機イベント一覧
動的パフォーマンスビューの活用
RAC環境ではgv$ビューを使う
【実例】ロックを発生させて待機イベントを確認する
まとめ

待機イベントとは？

Oracleデータベースでは、ユーザーセッションがSQLを実行している間、何かのリソースを待っている時間が発生します。この「待ち時間（Wait Time）」の原因を特定するための情報が「待機イベント」です。

【図：セッションの状態】
+-------------+         +--------------------------+
| SQL実行中    | ----->  | データブロックの取得待ち  |
+-------------+         +--------------------------+
                             ↓
                         イベント名：db file sequential read

代表的な待機イベント一覧

イベント名	内容
`db file sequential read`	インデックスアクセス時のI/O待ち
`db file scattered read`	フルテーブルスキャン時のI/O待ち
`enq: TX - row lock contention`	ロック競合による待機
`log file sync`	REDOログ書き込みの同期待ち
`buffer busy waits`	バッファキャッシュの競合

動的パフォーマンスビューの活用

v$session

現在のセッションごとの状態（実行中 or 待機中）や待機イベントが確認できます。

SELECT sid, serial#, status, event, wait_class, state
FROM v$session
WHERE username IS NOT NULL;

v$session_event

セッションごとに発生したイベントの累積情報が格納されています。

SELECT sid, event, total_waits, time_waited
FROM v$session_event
WHERE event NOT LIKE 'SQL*Net%';

v$system_event

インスタンス全体のイベント情報が格納されています。

SELECT event, total_waits, time_waited, average_wait
FROM v$system_event
WHERE event NOT LIKE 'SQL*Net%';

v$session_wait（※Oracle 10g以前）

セッションごとの現在の待機情報（Oracle 10g以降はv$sessionで事足ります）

RAC環境ではgv$ビューを使う

RAC環境ではインスタンスが複数存在するため、各インスタンスごとの情報を一括で取得するには、gv$ビューを使用する必要があります。

SELECT inst_id, sid, serial#, event, wait_class, state
FROM gv$session
     ~~~~~~~~~~★gv$ビュー
WHERE username IS NOT NULL;

【実例】ロックを発生させて待機イベントを確認する

以下の手順で、ロック競合を発生させ、enq: TX - row lock contention イベントを確認することができます。

1. テスト用表の作成

CREATE TABLE lock_test (
  id NUMBER PRIMARY KEY,
  name VARCHAR2(50)
);

INSERT INTO lock_test VALUES (1, 'taro');
COMMIT;

2. セッションAで更新してロックを保持

-- セッションA
UPDATE lock_test SET name = 'jiro' WHERE id = 1;
-- COMMITやROLLBACKをせずにこのままロックを保持

SQL> UPDATE lock_test SET name = 'jiro' WHERE id = 1;  ★UPDATEを実行(commitしない)

1行が更新されました。

SQL>

3. セッションBで同じ行を更新し、ロック待ちにさせる

-- セッションB（別ターミナル）
UPDATE lock_test SET name = 'saburo' WHERE id = 1;
-- このSQLはセッションAのロックが解除されるまで待機状態になる

SQL> UPDATE lock_test SET name = 'saburo' WHERE id = 1;  ★コマンドが完了せず待機する

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4. セッションBの待機イベント確認

SELECT sid, event, wait_class, state
FROM v$session
WHERE username = '対象のユーザー名';

enq: TX - row lock contention というイベントが表示されれば、ロックによる待機が発生していることがわかります。

SQL> SELECT sid, event, wait_class, state
  2  FROM v$session
  3  WHERE username = 'USER1';

       SID EVENT                          WAIT_CLASS                STATE
---------- ------------------------------ ------------------------- --------------------
        62 SQL*Net message from client    Idle                      WAITING
        82 enq: TX - row lock contention  Application               WAITING  ★

まとめ

観点	内容
待機イベントとは	SQL実行時にリソース待ちが発生している状態
主なビュー	`v$session`, `v$session_event`, `v$system_event`, `v$session_wait`
RACでは？	各インスタンスの情報を集約するために`gv$`ビューを使う
実験方法	ロックを意図的に発生させて`enq: TX - row lock contention`を確認

[参考]
C.3 待機イベントの説明

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